この他の目を引く改正事項として、事業承継税制を更に拡充するための改正があります。
12月14日、与党自由民主党・公明党より平成30年度税制改正大綱が公表され、22日、閣議決定されました。
報道では主に所得税の改正がクローズアップされており、給与所得控除が一律10万円減額される一方で、納税者全員に適用される基礎控除が一律10万円増額と、控除方法のシフトがなされています。給与所得控除の上限額が年収850万円超の水準に引き下げられることを考えても、この改正は高給のサラリーマンには増税、いわゆるフリーランスの方にとっては減税、という構図になっています。
この他の目を引く改正事項として、事業承継税制を更に拡充するための改正があります。
事業承継税制とは、会社経営が社長の子供などの後継者に承継される際に生ずる非上場株式への相続税・贈与税課税を一定の範囲で猶予する仕組みです。承継の際の課税負担により事業承継が円滑に行われず、それまで築き上げて来た中小企業の貴重な技術やノウハウが失われることのないよう、平成21年度の税制改正で導入されました。
その後、制度の適用範囲の拡大、手続きの効率化を図るための改正を重ね、昨年度も雇用の維持にかかる要件の緩和や、相続時精算課税制度との併用を認めるなどの改正が行われたばかりでした。
先日公表された税制改正大綱の中ではこの事業承継税制に関して、10年間の特例措置としながらも、猶予範囲の拡大や更なる要件緩和が図られることとなりました。
以下、平成30年中に改正が予定されている内容につきご紹介します。
これまで適用対象となる株式は議決権株式総数の3分の2までに制限されておりましたが、これが経営者の保有する全株式に拡大されます。
また、相続税・贈与税の課税が猶予される割合もこれまでの80%から100%とされますので、結果として発生する税額の全額が猶予されることとなります。
事業承継税制の各種要件の一つに、「承継後5年間で平均8割の雇用を維持する」というものがあり、もし要件を満たさなくなった場合は、課税の猶予措置が打ち切られてしまいます。
今回の改正では、この雇用確保要件を満たさない場合であっても、その満たせない理由を記載した書類を都道府県に提出することにより課税猶予の打切りを回避できる措置が設けられることとなりました。
これまでの事業承継税制の対象とされていた承継は先代経営者から後継者への1対1の引継ぎが前提とされていましたが、今回の改正により、代表者以外の株主からの承継や、一定の経営計画の提出を条件に最大3人までの後継者への承継が可能となります。
この他、株式の譲渡や会社の解散などにより課税が生じることとなる場合の税額計算において、一定額が納税免除となる仕組みなども新設されることとなっています。
事業承継税制は経営の引継ぎ時の課税負担の軽減に大きな効果をもたらすことができる制度ではあり、近年の改正によりその効果は拡充しておりますが、事前認定の取得や年次報告など、様々な手続きが求められ、ある程度の煩雑さも伴います。専門家にご相談の上、計画的にお進めいただければと思います。
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