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vol.136本号の内容

2024年3月4日

  • 一度行った相続放棄は取消ができるのか

名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦恵一

一度行った相続放棄は取消ができるのか

はじめに

相続が開始された際に、財産よりも借金の方が多く、相続の放棄をされる方もいらっしゃると思われます。

令和4年では、相続放棄の件数は約26万件くらいあるようです。

相続を放棄することで最初から相続人ではなかったことになり、プラスの財産もマイナスの負債も、どちらも相続せず、引き継がないことになります。

相続放棄には条件が特にありませんので、財産があってもなくても、負債があってもなくても、任意にすることができます(※期間制限はあります)。

そのため、他の相続人から借金があると聞かされて相続放棄をしたものの、実はそれを上回る財産があるなどの事情で、後から相続放棄をしなければよかったという場合もあるかもしれません。

相続放棄の取消

相続放棄は、裁判所が受理をするまでは取下げをすることができます。

しかし、以下の通り、一度受理がされてしまいますと、撤回することができなくなります。

民法919条1項「相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。」

しかし、撤回はできなくても、場合によっては取消をすることが認められています。

民法919条2項「前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。」

例えば民法総則の規定による取消とは、錯誤による取消(改正後の民法95条)、詐欺又は強迫による取消(民法96条)といったものが挙げられます。

このような取消は、いつまでもできるというものではなく、追認をすることができるとき、つまり取消の原因となっていた状態が解消されたときから6か月を経過した場合や、相続放棄の時から10年を経過した場合には、時効によって取り消すことができなくなります。

民法919条3項「前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。」

そのため、いつまでもできるという訳ではなく、また民法の規定に基づく要件を満たす必要がありますが、裁判所に相続放棄の取消の申述をして、裁判所が認めた場合には、相続放棄を取り消すことができます。

古い裁判例ですが、相続放棄の申述は、第三者の欺罔(つまり騙したこと)によるものだとして、相続放棄の申述の取消を認めた例があります(東京高等裁判所平成27年7月22日決定)。

相続放棄の効力が認められない場合

これ以外に、相続放棄の効力が認められないと思われる場合もあります。

例えば、民法921条では、相続人が単純承認をしたとみなされる場合として、以下のような場合を挙げています。

1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

2 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

相続の放棄をした後であっても、相続人が相続財産の全部又は一部を消費した場合が挙げられていますので、後になって相続放棄を取り消したいと思った相続人が、その目的で相続財産の一部を消費したような場合、相続放棄の取消と同じような効果が得られる可能性も考えられますし、もしくは信義則違反などでそのような効果は主張できないことも考えられます。


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フリーランス新法が公布されました https://www.nagoyasogo-kigyo.com/freelance/ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/freelance/#respond Wed, 28 Feb 2024 08:47:01 +0000 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/?p=5992 弁護士 田中 優征 はじめに 令和5年5月、いわゆる“フリーランス新法”が公布されました。 この法律は、遅くとも令和6年11月までに施行されます。 本稿では、その内容や注意点について解説します。 フリーランス新法とは 副 … "フリーランス新法が公布されました"の続きを読む

フリーランス新法が公布されました名古屋市の企業法務弁護士に契約・労務問題・顧問のご相談を-愛知県で公開された投稿です。

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弁護士 田中 優征

疑問

はじめに

令和5年5月、いわゆる“フリーランス新法”が公布されました。

この法律は、遅くとも令和6年11月までに施行されます。

本稿では、その内容や注意点について解説します。

フリーランス新法とは

副業など、働き方が多様化していく時代の流れとともに、フリーランスの数は増加していると言われており、総務省の作成した令和4年就業構造基本調査では、本業がフリーランスの人の数は209万人に及ぶとされています。

フリーランスが企業や団体などから依頼を受けて仕事をする際、その契約形態は、民法上の委任契約や請負契約に該当することが一般的です。

日本においては、労働契約(雇用契約)の場合には、労働者として手厚い保護が受けられる一方、委任契約や請負契約にはそのような保護はありません。

そのため、報酬の支払い遅滞や不払い等、不当な取り扱いを受けるというトラブルが起きたり、従業員等を雇わずに一人で業務を行っているような人は、納期を守るためには自分一人で稼働し続けなければならないといった問題もあります。

このような背景から、フリーランスとして働く方に保護を与えることで安定的に働くことを可能にするためにできたのが、いわゆるフリーランス新法です。

(なお、委任契約などの形態をとりながら、実態としては委任者の指揮命令下にあるような場合には、実質的に労働契約としての保護が与えられる余地がありますが、本稿においては取り扱いません。)

対象

上記のような問題背景があるため、フリーランス新法の適用対象になるのは、他の事業者から、その事業のために、物品の製造・情報成果物の作成の委託や役務の提供の委託を受ける事業者の内、
① 従業員がいない個人

② 代表者一人を除いて他の役員や従業員がいない法人

のどちらかです。

このような事業者は、フリーランス新法においては、「特定受託事業者」と呼ばれます。

なお、ここでいう従業員とは、週20時間以上 かつ 31日以上の雇用が見込まれる者を想定していると説明されています。

つまり、フリーランス事業者が、一時的に他者を雇って事業を行う場合であっても、フリーランス新法の適用対象になる場合があるということになるので、注意が必要です。

これに対し、業務を委託する側の事業者については、法の適用自体には限定はありませんが、以下のように分類され、分類によって適用される範囲が異なります。

⑴ フリーランス事業者に業務を委託する事業者すべて
⑵ ⑴の内、従業員または代表者以外の役員がいるもの
⑶ ⑵の内、継続的に発注する場合

内容

フリーランス新法の内容につき、前記の分類に従って説明します。

⑴ 適用対象のフリーランス事業者に業務を委託する事業者すべてに適用されるもの

・取引条件の明示

フリーランス事業者に業務を委託した場合には、直ちに、給付の内容・報酬額・支払期日などの事項を書面・電磁的方法により明示しなければなりません。

⑵ 適用対象のフリーランス事業者に業務を委託する事業者の内、従業員または代表者以外の役員がいる事業者に適用されるもの

・報酬の支払期日について

報酬について、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできるだけ短い期間内で報酬の支払期日を定め、それまでに報酬を支払わなければなりません。

なお、報酬の支払期日を定めない場合には、物品等を受領した日が、物品等を受領した日から60日を超える日を支払期日にした場合には、受領した日から60日を経過した日の前日がそれぞれ支払期日になります。

・募集条件の的確表示

広告などにより、募集情報を提供するときには、虚偽や誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

・ハラスメント防止体制

いわゆるセクハラやパワハラ等について適切に対応するための体制の整備その他必要な措置を講じなければなりません。

⑶ ⑵の内、継続的に業務を委託する事業者に適用されるもの

・遵守事項

フリーランス事業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、物品等の受領を拒むこと、報酬を減額すること、返品を行うことや、内容の変更・やり直しをさせることをしてはなりません。
また、不当に低い報酬額を定めたり、正当な理由なく自己の指定する者の購入等を強制することや、金銭、役務その他経済上の利益を提供させてはなりません。

・育児介護等への配慮

フリーランス事業者からの申し出に応じ、育児介護等と業務を両立できるように必要な配慮をしなければなりません。

・中途解除の予告

中途解除や、更新しない場合には、少なくとも30日前にその旨を予告しなければなりません。また、予告の日から契約満了までにその理由の開示を請求された場合には、これを開示しなければなりません。

違反行為について

適用対象のフリーランス事業者が、フリーランス新法に違反していると考えた場合には、その内容に応じて、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の窓口に申告することができるようになります。

申告を受けた行政機関は、委託事業者に報告をさせたり、立入検査の実施や、指導・助言、勧告等をすることができます。

勧告に従わない場合に出される命令に違反した場合には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

終わりに

フリーランス新法の施行後は、フリーランス事業者に業務を委託する場合には、フリーランス新法の適用がある可能性があるので注意が必要です。

今後は、当該委託先のフリーランス事業者がフリーランス新法の適用対象かどうかを確認したうえで、適用対象である場合には、自社が前記⑴から⑶のどの分類に該当するかを確認し、分類に従った事項を遵守できるように体制を整えていく必要があると思われます。

なお、フリーランス新法上は適用対象外であったとしても、上記のような事項を遵守できるように体制を整えておくことはトラブル防止の観点から有益であると思われます。

フリーランス新法の施行を機に、フリーランス保護という観点から、業務委託先との付き合い方を再考してもよいかもしれません。

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vol.135本号の内容

2024年2月5日

  • 専門業務型裁量労働制に関する法改正情報
    -準備されていますか?2024年4月労働基準法改正-

名古屋総合社労士事務所
社会保険労務士 増田友子

専門業務型裁量労働制に関する法改正情報

-準備されていますか?2024年4月労働基準法改正-

はじめに

裁量労働制を導入されている会社の皆様、2024年(令和6年)4月1日から、裁量労働制の運用が変更されます。

2023年(令和5年)3月30日の官報において、労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第39号)」が公布されました。

2024年(令和6年)4月1日以降、新たに又は継続して裁量労働制を導入するためには、以下の事項を必ず追加し、裁量労働制を導入・適用するまで(継続導入する事業場では2024年(令和6年)3月末まで)に所轄労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要があります。

今回は、裁量労働制の中でも比較的導入割合の多い、専門業務型裁量労働制に関し、法改正情報をお知らせします。

裁量労働制とは

そもそも、裁量労働制とは労働時間の算定に際し、あらかじめ会社と労働者で協定した時間数労働したものとみなし、そのみなし時間分の賃金を支払う制度のことです。

業務の性質上、その遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要があるために、使用者(会社)が具体的な業務遂行方法等を指示をすることが困難もしくは具体的な指示をしないこととする業務形態について、労使協定で定めた時間を労働したとみなす制度となります。

したがって、裁量労働制を自社に適用させるためには、まずは、

  • ・就業規則に裁量労働制の根拠規定を定める
  • ・労使協定を締結し労働基準監督署に届出る
  • ・労働者個人へ裁量労働制を適用する旨の労働条件の提示をする

ことが必要です。

厚生労働省 裁量労働制の解説: https://www.mhlw.go.jp/content/001166653.pdf


裁量労働制には、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の2種類があり、それぞれの導入要件が定められています。

法改正による変更点 その1

専門型裁量労働制は、法律で定められた19の業務についてのみ適用が認められていましたが、今回の法改正で新たにM&Aアドバイザリー業務が追加されました。

法改正による変更点 その2

専門業務型裁量労働制の労使協定において、協定しなければならない事項が以下のように追加されました。つまり、今回の法改正により、裁量労働制を運用するにあたり、会社がしなければならない事項が増え、当該制度を適法に運用するハードルが上がった、と考えられます。

  1. 制度の導入にあたり、本人同意を得ること
  2. 制度の適用にあたり、労働者が同意しなかった場合に不利益な取り扱いをしないこと
  3. 制度の適用に関する同意の撤回の手続を定めること
  4. 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること
  5. 健康・福祉措置に関する事項の追加

1について、これまでは専門業務型裁量労働制の導入にあたり、労働者個別の同意までは求められていませんでした。しかし、今回の法改正で、専門型においても労働者の同意を得ることが必要になりました。これには、書面交付によるもの、電子メールやイントラネットを介した方法によるものでもよいとされています(令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A:
https://www.mhlw.go.jp/content/001164350.pdf)。

ここで重要な点は、労働者が確実に裁量労働制の制度内容を理解することが出来る手段で会社が説明し、その上で、労働者の自由意思による同意を得ることが適切とされていることです。労働者が十分に制度を理解しないままに、会社が当該制度を導入し、みなし時間を基礎に賃金支払を継続していても、法的には労働時間のみなし効果が発生しない可能性があるということです。

2および3について、同意しないことや、一度同意したものの、のちにその同意を撤回する場合、その申し出方法、申し出先となる部署名、担当者、同意の撤回方法等をあらかじめ具体的に明らかにすることが必要とされています。さらに、不同意や同意の撤回をした労働者に対して、それを理由として不利益な取り扱いをしてはならないものとされています。

4について、同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を、その労働者ごとに労使協定の有効期間中及びその満了後5年間(当面は3年間)保存することを、労使協定に定めることが加えられました。

5について、裁量労働制を導入するためには、以前より労働者に対して健康・福祉措置を講じることが求められていましたが、今回の法改正で新たに以下の項目を「健康・福祉措置」として定めることが適切であると定められました。


※改正後の「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」

事業場の対象労働者全員を対象とする措置
(イ)勤務間インターバルの確保
(ロ)深夜労働の回数制限
(ハ)労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
(ニ)年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めたその取得促進

個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置
(ホ)一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
(ヘ)代償休日又は特別な休暇の付与
(ト)健康診断の実施
(チ)心とからだの健康問題についての相談窓口設置
(リ)適切な部署への配置転換
(ヌ)産業医等による助言・指導又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

(イ)から(二)までの措置、(ホ)から(ヌ)までの措置をそれぞれ1つずつ以上実施することが望ましいことに留意することが必要です。(このうち、特に把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、(ハ)を実施することが望ましいとされています。)

さいごに

裁量労働制を導入するにあたっては、多くの要件、手続きが必要であり、その運用も簡単なものではありません。しかし、制度を上手に利用し、適切な労務管理を行うことが出来れば、労使双方にメリットがあり、労働者のモチベーションをUPさせることが出来る可能性も十分にある制度となっています。

制度導入の要件、リスクとメリットデメリットをしっかりと理解して、より良い労働環境が形成されることを目指し、制度を活用していきましょう。


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vol.134本号の内容

2024年1月15日

  • インターン生は労働者に当たるか

名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦恵一

インターン生は労働者に当たるか

はじめに

近年では、学生がインターンとして企業に行って活動することが定着してきている印象があります。

インターンシップに関しては法律上の定義は特にありませんが、一般的な意味としては、在学中の学生が、将来のキャリアや職業選択のために、職業・職場を体験することといった意味で使われるようです。

この意味からは、あくまで仕事を体験するといった程度の意味で、具体的に働くことは想定されていないと考えられます。

他方、インターンを実施している企業の中には、職業・職場体験の中で、実際にその企業の社員が行っているような仕事をさせてみる企業もあるようです。

職業・職場の体験となれば、実際に社員が行っている仕事をしてみるというのも職業・職場の体験に含まれそうですが、その場合、労働をさせているのか、労働者に当たるのかどうかの問題が出てきます。

労働者に当たるのであれば、労働基準法や最低賃金法などが適用されることになります(労働契約書等を作っていない場合であっても)。

そうなると、インターン生と労働者の区別は、どのようにつけるのでしょうか。

インターン生と労働者の区別とは

この点で参考になるものとして、旧労働省の通達(平成9年9月18日基発第636号)では、以下のような説明、通達が出されています。

「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる」

この点から要素を抜き出しますと、①生産活動に従事するなど利益・効果を企業が受けている、②使用従属関係がある、という2点がポイントになりそうです。


生産活動に従事し、その作業によって企業を利益や効果を受けている場合としては、例えば何かを作ったり、運んだりと、その企業の通常の業務(社員が普段行っている営業等の活動)に当たれば、その企業はその作業による利益等を受けていると言えそうです。

逆に、単なる説明、見学やその企業に直接の利益をもたらさないような活動(経営計画等の検討、研修など)であれば、この点には当てはまらないように思われます。

次の使用従属関係というのは、どこまでの関係を指すのか必ずしも明確ではありませんが、企業の始期・命令下にあるか、命令に従わなければならないか、何らかの義務・ノルマが課されているか、といったような点から判断されることが多いとは思われます。

逆に、課題はあるが必ずしもこなす必要や義務はなく、成果を上げる必要性がない、課題を拒否できるということであれば、指揮命令下になく、使用従属関係にはないということが考えられます。

インターン生が労働者にあたる場合の注意点

インターンシップを行い、インターン生を受け入れる場合であっても、普段から企業が業務として行っている単純作業などをさせた際には、労働者として労働基準法や最低賃金法等の適用、つまり給料等が発生する可能性がありますので、この点には注意が必要でしょう。

また、労働者に当たることになれば、インターン中に事故などが起こった場合の労災保険の適用なども考えられますし、場合によっては社会保険料や源泉徴収の義務も発生する可能性があります。

他方、労働者ではないとなったとしても、インターン中には企業の安全配慮義務があると考えられますので、インターン生に何らかの事故等が発生した場合には、企業の責任が問われる可能性があります。

逆に、インターン生がインターン活動中に第三者に損害を発生させてしまい、企業が使用者責任などを問われる危険性もあります。
そのような場合に備えて、企業活動の賠償責任保険に加入しておいた方がいいかもしれません。


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取締役退任後・従業員退職後の競業避止義務 ―競業避止義務を定めている場合― https://www.nagoyasogo-kigyo.com/after-resignation/ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/after-resignation/#respond Wed, 17 Jan 2024 07:36:46 +0000 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/?p=5952 弁護士 田中 優征 競業避止義務について 以前、競業避止義務についての記事において、退職後の競業避止義務についての定めがない場合について取り扱いました。 本稿では、退職後の競業避止義務についての定めがある場合について述べ … "取締役退任後・従業員退職後の競業避止義務 ―競業避止義務を定めている場合―"の続きを読む

取締役退任後・従業員退職後の競業避止義務 ―競業避止義務を定めている場合―名古屋市の企業法務弁護士に契約・労務問題・顧問のご相談を-愛知県で公開された投稿です。

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弁護士 田中 優征

疑問

競業避止義務について

以前、競業避止義務についての記事において、退職後の競業避止義務についての定めがない場合について取り扱いました。

本稿では、退職後の競業避止義務についての定めがある場合について述べます。

退職後の競業避止義務の定めがある場合

以前に述べた通り、取締役の退任後や、従業員が退職した後について、法律上当然に競業避止義務を負うことはありません。

もっとも、合意や就業規則によって退職後の競業避止義務を定めることは可能です。
それでは、このような競業避止義務の定めは常に有効になるのでしょうか。

この点について、競業避止義務は、憲法上認められている基本的人権である職業選択の自由・営業の自由を制約するものですから、合意があるとしても、無制限に競業避止義務が認められるわけではなく、その内容によって、個別に有効性が判断されます。

具体的には、おおよそ以下の4つの観点から判断されると説明されています。

①使用者の利益(競業制限の目的)

使用者の保有している営業機密やノウハウ等が使用者に固有なものであり、退職者がこれらを利用して競業行為を行うことによる不利益が大きい場合には、
競業避止義務を課すことによる利益は保護に値するものと考えられやすくなります。

②退職者の従前の地位

退職者が従前に高い地位に就いていたのであれば、使用者の利益を尊重するべき立場にあるものといえるため、競業避止義務が認められやすくなる事情になります。
また、高い地位にあったのであれば、企業内の様々な情報にアクセスできたでしょうから、その意味でも重要な事情になるものと思われます。

③競業制限範囲の妥当性

前述の通り、競業避止義務は、退職者に憲法上保証されている権利を制約するものですから、競業避止義務を定める目的との関係で、妥当な方法かどうかが判断の要素になります。
具体的には、禁止される業務の内容、競業を禁止するエリア、期間等が妥当な範囲に限定されているかどうかが考慮されます。

④代償措置の有無、内容

競業避止義務は、退職者にとって生計を立てるための手段を制限するものですから、競業避止義務を課すことになる代わりに何らかの補償がなされているかどうかが判断の要素になります。主には金銭的な補償の有無(競業禁止期間中の給与相当額の支払い等)が問題になります。

もっとも、独立支援制度としてフランチャイジーとなる途が開かれていることを代償措置として考慮している裁判例(東京地裁平成20年11月18日判決〔トータルサービス事件〕)もあります。

裁判例

競業避止義務合意の有効性について、裁判例(東京地裁平成19年4月24日判決〔ヤマダ電機事件〕)を紹介します。

事案としては、やや簡略化すると、家電量販店チェーンを全国的に展開する会社である原告が、原告に従業員として勤務し、地区部長や店舗の店長を務めた被告との間で、退職するに際して、退職後1年間は同業種、競合する個人・企業・団体への転職をしない旨の誓約書を作成したものの、被告が、人材派遣会社を経由して同業他社に入社したため、競業避止義務違反を原因として損害賠償の支払いを求めたというものです。

誓約書には、違反した場合には、退職金を半額に減額するとともに直近の給与6か月分に対し、法的処置を講じられても一切意義は申立てないという内容が含まれていました。

裁判所は競業避止義務の有効性について、本稿で述べた①ないし④等を考慮して判断するという前提で、概要以下の通り判示しました。

(①②について、)被告は、原告において、複数店舗の店長を歴任したことにより、店舗における販売方法や人事管理の方法を熟知し、
母店長(店長の上位職)として複数店舗の管理に携わり、さらに、地区部長の地位に就き、営業会議に出席して原告の全社的な営業方針、経営戦略等を知ることができたと認められる。
他の家電量販店チェーンを展開する会社に就職した場合、原告は相対的に不利益を受けることが容易に予想されるから、これを未然に防ぐことを目的として、
被告のような地位にあった従業員に対して競業避止義務を課すことは不合理ではない。

(③について)転職が禁止される範囲は、原告の業務内容から、同業種とは家電量販店に限定されると解釈することができる。
退職後1年間という期間は、上記目的からすれば不相当に長いものではない。
条項について、地理的な制限がないが、原告が全国的に家電量販店チェーンを展開する会社であることからすると、禁止範囲が過度に広範であるということもない。

(④について)誓約書の提出を求められる一定の役職以上の従業員に対し、それ以外の従業員に比して高額の基本給、諸手当等を給付しているとは認められるものの、これが競業避止義務を課せられたことによる不利益を保証するに足りるものあるかどうかについては、十分な立証があるとはいい難い。しかし、代償措置に不十分なところがあるとしても、この点は違反があった場合の損害額の算定にあたり考慮することができるから、このことをもって競業避止条項の有効性がうしなわれることはない。

(その他の事情について)誓約書の提出に強制的な面があることは否定しえないとしても、原告側に提出を求める正当な理由があることから、直ちに公序良俗に反すると見ることはそうとうでない。
被告は誓約書の内容を理解したうえでその作成に応じたと認められるから、自由意志が抑圧されていたわけではない。

被告は、本件競業避止条項に違反する状態が生ずることを認識しながら誓約書を作成し、退職の翌日に派遣社員という形を装って他者の関連会社で働き始めたのであるから、
被告は競業避止条項違反につき何ら責めを負わないと解することは相当でない。

以上のように判断して、競業避止条項は有効であると判断したうえで、退職金の半額分の損害賠償請求は認めたものの、給与については、1か月分相当額の限度で損害賠償請求を認めました。

終わりに

上記裁判例は、退職者の従前の役職から、退職者が企業にとって重要な情報を有しており、同業他社に就職してしまうと、当該他社が退職者の有する情報によって利益を得る反面、
企業が不利益を負ってしまうものとして競業避止義務を課すことに合理性を認めています。

そして、競業避止義務を課す範囲について個別の事情を考慮したうえで、代償措置も踏まえて有効性を判断しています。

一般的な感覚からすれば、退職後に競業行為を行うことは不誠実ですし、競業禁止について明確に合意しているのであるから、その合意は常に効力を有するものと考えてしまうかもしれません。
しかし、上記で見た通り、裁判所は、競業禁止の合意について、個別の事情を考慮して有効性を判断しています。

このような点を踏まえると、競業避止義務についての合意をする場合には、競業避止義務を課さないとすれば、企業側にどのような不利益が生じるかを検討し、
その不利益が生じることを防ぐために合意をするという前提を整理しておく必要があるでしょう。

そして、その不利益を防ぐためには、競業をどのような内容で、どのようなエリアで、どのような期間禁止するのが妥当といえるか、
そして、退職以前の待遇や退職金の金額など、競業を制限することと引き換えに何らかの手当をしているかどうかも踏まえて検討する必要があります。

例えば、上記裁判例では、競業禁止エリアの限定がないことは不相当ではないと判断していますが、それは原告が全国展開する家電量販店チェーンを経営する会社であるからと考えられます。
通常の企業であれば、全国での競業を禁止することは過度な制約であると判断されるリスクがあります。

このように、個別の検討なく、範囲について特段の限定をすることなく合意をしてしまうと、競業避止合意の有効性自体に影響を及ぼしかねませんので注意が必要です。

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VOL.133 2023/12/25 【令和6年度税制改正大綱 - 所得税定額減税の実施】 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/vol-133/ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/vol-133/#respond Wed, 17 Jan 2024 07:14:21 +0000 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/?p=5947 弁護士&社労士&税理士&司法書士が教える! 企業法務・労務・税務・登記に役立つ法律情報 名古屋総合社労士事務所 経営者、企業の法務担当者・人事労務担当者・管理部門担当者の皆さまがビジネスで必要な法律・労務・税務・登記知識 … "VOL.133 2023/12/25 【令和6年度税制改正大綱 - 所得税定額減税の実施】"の続きを読む

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vol.133本号の内容

2023年12月25日

  • 令和6年度税制改正大綱 - 所得税定額減税の実施

税理士法人 名古屋総合パートナーズ

令和6年度税制改正大綱 - 所得税定額減税の実施

はじめに

2023年は消費税インボイス制度が開始となり、かなりの混乱も生じたこともあって、世相を表す「今年の漢字」に「税」が選ばれるほど、税をめぐって何とも慌ただしい一年となりました。

これを締めくくるかのように、今月14日に政府・与党より令和6年度税制改正大綱が公表されました。

今回はデフレ脱却と賃上げの定着を目指し、所得税の定額減税を始め、賃上げに伴う税額控除の拡充、子育て世帯向けの減税措置などが盛り込まれる内容となっております。


所得税の定額減税の実施

改正事項の中で注目されるのは、やはり所得税の定額減税の実施になります。

この定額減税は、居住者である納税義務者の令和6年分の所得税額より、本人、同一生計配偶者および扶養家族一人につき3万円を、同じく住民税額より一人につき1万円をそれぞれ控除するかたちで行われます。

ただし、令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超える者(給与収入であれば2,000万円を超える者)については対象となりません。

この控除は、給与所得者については、令和6年6月1日以降に支給される給与および賞与にかかる源泉徴収税額から控除される方法で行われます。もし6月支給の給与より全額が控除できない場合は、それ以降に支給される給与および賞与から順次控除されることとなります。

また住民税については、令和6年6月に支給する給与からの徴収を行わず、上記控除額を差し引いた後の税額を11等分し、これを令和6年7月から令和7年5月までに支給される給与より徴収することにより、控除が実施されます。

住民税は、市町村より届けられる特別徴収税額決定通知書の記載どおりに毎月徴収するという方法に変わりはないので特に混乱はないかと思いますが、所得税は給与支払者(源泉徴収義務者)に、従業員ごとに控除しきれなかった(次月に繰り越す)控除額を管理しなければならないといった負担がかかることになりそうです。

なお、個人事業主については、所得税は第1期分予定納税(7月末)より、住民税は第1期分(6月末)の普通徴収納付額よりそれぞれ控除され、控除しきれない部分については第2期分より(住民税は第2期分以降順次)控除されることになります。

減税分を控除した後の納付書が税務署および市町村から届けられるのであれば分かり易いのですが、給与所得者である一方で事業所得も申告している納税者の存在を考えると、どのような取り扱いになるか現時点では何とも言えません。詳細につきましては、この後公表される情報をご確認ください。(大綱の中でも、財務省と国税庁は法案提出前であっても制度の詳細についてできる限り早急に公表し周知広報を行うことが謳われております。)


相続税関連の大きな改正事項

ところで、今回の税制改正大綱の中で、相続税関連の大きな改正事項は盛り込まれませんでした。

ただ、前年度の大綱に盛り込まれず、今年いっぱいで終了になるのではと話題になっておりました住宅取得等資金にかかる贈与の非課税措置ですが、今回の大綱の中で3年の延長が決まりました。法律になるのは来年3月になるかと思われますが、令和6年1月1日以後に行われる贈与より適用される旨が大綱の中で明示されております。

税制調査会で検討されておりました、高校生世代の扶養控除の縮小は、令和7年度の税制改正の中で令和8年分からの適用が決定される見込みです。また、23歳未満の扶養親族を対象とした生命保険料控除の限度額引上げも次年度に持ち越されております。

これらの措置の具体的内容は、次年度の税制改正大綱が公表される際に改めてご確認いただければと思います。


次のようなご心配事がある場合は、名古屋総合リーガルグループがお役に立てますので、ぜひお電話ください。

  • 労務問題が心配なので、雇用契約書と就業規則について相談したい。
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株式譲渡の覚書の効力 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/kakusho/ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/kakusho/#respond Fri, 01 Dec 2023 08:32:36 +0000 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/?p=5896 弁護士 杉浦 恵一 はじめに 中小企業では、大半がいわゆる閉鎖会社であることが多いと思われます。 閉鎖会社とは、株式の譲渡に制限がついていて、株式を譲渡するためには株主総会や取締役会の承諾が必要な会社のことですが、だいた … "株式譲渡の覚書の効力"の続きを読む

株式譲渡の覚書の効力名古屋市の企業法務弁護士に契約・労務問題・顧問のご相談を-愛知県で公開された投稿です。

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弁護士 杉浦 恵一

疑問

はじめに

中小企業では、大半がいわゆる閉鎖会社であることが多いと思われます。

閉鎖会社とは、株式の譲渡に制限がついていて、株式を譲渡するためには株主総会や取締役会の承諾が必要な会社のことですが、だいたいの会社でこの譲渡制限が設けられていると思われます。

このような会社では、創業者やその事業承継者が全部または大半の株式を所有しているような場合、株式譲渡に関してはあまり問題にならないことが多いとは思います(ここでは事業承継の問題は除きます)。

しかし、中小企業の中でも、相続や事業承継といった事情により、役員が分散して会社の株式を所有しているという会社もあるのではないかと思います。

このような会社では、事実上、会社の株主を役員に限るために、役員を退任した際には会社の株式を、会社や役員(代表取締役・取締役会など)の指定する方に譲渡するという覚書などの書類を作成している会社もあるようです。

覚書の効力

このような覚書には、どこまでの効力があるのでしょうか。

まず、そのような覚書を会社に提出している場合、会社と退任する役員との間では、どのような効果があるのでしょうか。

会社としては、そのような覚書によって株式の譲渡先を指定し、当然に株式売買が成立することを期待していると考えられます。

しかし、退任する役員と会社が指定する第三者との間で、会社が意思表示をするだけで当然に売買契約が成立することになるのでしょうか。

そのような会社の意思表示で他者間の売買契約が成立するという可能性はありますが、典型的な契約(民法に類型のある契約)ではありませんので、どこまで効力があるのかは何とも言えないところです。

実際に裁判所でその覚書などの有効性の有無が判断された場合、具体性などの点で効力がないという判断がされる可能性も否定できません。

株主間の契約

次に、株主間の契約という形で合意すると、どのようなことが考えられるでしょうか。一般的に、株式を譲る側の役員(株主)と株式を譲り受ける側の役員(株主)との間で、退任する場合にその退任する株主(役員)の持ち株式をどのようにするか、合意する場合もあります。

その内容としては、いろいろな内容が考えられますが、株式の譲渡に関するものであれば、譲渡する場合には誰に譲渡するか、譲渡する方法や金額などを決めておくことが考えられます。

ただし、このような契約によって、必ずしもその内容通りの効果が当然に発生するとは限りません。

あくまで約束を守るように求めることはできても、その約束どおりの法的効果が生じるとは限らないとされるようです。

他の方法

他の方法として、民法上、売買の一方の予約(民法556条)というものがあり、以下のような条文が定められています。

1 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。

2 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、

その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、

相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。

このように、将来的に売買契約をすることを予約しておくことも可能です。

ただ、予め買う側が決まっていなければなりませんので、不特定の者との間での契約は困難ですし、期間をどのくらいと定めておくかという問題もあります。

最後に

このように、将来的に(役員を退任した時や会社が決定する任意の時に)、不特定の相手に対して、一方的に株式を譲り渡すような契約は、効力があるかどうか判断が難しい部分が多々あります。

このような覚書や合意書を作成する際には、慎重に検討する必要があるでしょう。

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代金の受け取りが犯罪?!~「頂き女子」と組織犯罪処罰法~ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/itadakijoshi/ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/itadakijoshi/#respond Wed, 08 Nov 2023 07:30:30 +0000 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/?p=5886 弁護士 杉浦 恵一 最近の報道で、いわゆる「頂き女子」(男性などから信頼関係や恋愛感情等の人的関係を基に金銭・物品を受け取る人物のこと)が詐欺で逮捕された上、その人物から売掛金を受け取ったホストクラブのホストや店舗責任者 … "代金の受け取りが犯罪?!~「頂き女子」と組織犯罪処罰法~"の続きを読む

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弁護士 杉浦 恵一

れつ

最近の報道で、いわゆる「頂き女子」(男性などから信頼関係や恋愛感情等の人的関係を基に金銭・物品を受け取る人物のこと)が詐欺で逮捕された上、その人物から売掛金を受け取ったホストクラブのホストや店舗責任者が、組織犯罪処罰法違反で逮捕されたという報道がありました。

この事案では、受け取った金銭がもともと詐欺によって取得された金銭であるとされています。
つまり「頂き女子」が金銭を受け取った行為が詐欺によるものだと認定されていることが前提にあります。
(※全ての「頂き女子」が犯罪をしているということではなく、単純な贈与等の場合も考えられます)

組織犯罪処罰法(正式な名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」)では、「犯罪収益」として、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役等の刑が定められている罪の犯罪行為により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産と定義しています(組織犯罪処罰法2条2項1号)。

詐欺罪は懲役刑の長期が4年を超えていますので、ここでは詐欺で得た財産は「犯罪収益」に該当することになります。

そして、組織犯罪処罰法では、その11条で「犯罪収益等収受」の罪として、以下のような内容が定められています。

組織犯罪処罰法11条

「情を知って、犯罪収益等を収受した者は、七年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。」

つまり、犯罪収益であることを知ってそれを受け取っただけでも、犯罪収益等の収受の罪により罰せられることになります。

上の例では、詐欺によって得られた金銭であることを知りながら、ホストクラブの売掛金を受け取ったという状況のようです。
報道では、共犯であることを認めたり、捕まる時は一緒だというメッセージをやりとりしていたと報道されていますので、受け取った金銭が犯罪収益によるものだと認識していたと、警察は判断しているようです。

例外として、「法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者」と「契約の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者」は除外されています。

具体的にどのような場合にこれらの例外に当たるのか、非常に分かりにくい書き方にはなっていますが、代金の支払いとして受け取った場合であっても、最初から(契約の時から)犯罪から得られた収益で支払いがされることを知っていた場合には、教唆(犯罪をするようにそそのかすこと)やほう助(犯罪をしやすように援助すること)に当たらなくても、このような犯罪収益の収受の罪に当たる可能性がありますので、注意が必要でしょう。

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VOL.132 2023/11/1 【雇い止め条項/更新上限条項について】 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/vol-132/ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/vol-132/#respond Mon, 06 Nov 2023 08:58:12 +0000 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/?p=5872 弁護士&社労士&税理士&司法書士が教える! 企業法務・労務・税務・登記に役立つ法律情報 名古屋総合社労士事務所 経営者、企業の法務担当者・人事労務担当者・管理部門担当者の皆さまがビジネスで必要な法律・労務・税務・登記知識 … "VOL.132 2023/11/1 【雇い止め条項/更新上限条項について】"の続きを読む

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vol.132本号の内容

2023年11月1日

  • 雇い止め条項/更新上限条項について

名古屋総合法律事務所

弁護士 杉浦恵一

弁護士&社労士&税理士が教える! 企業法務・労務・税務・登記に役立つ法律情報

はじめに

2013年に施行された労働契約法の改正により、いわゆる無期転換ルール(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)が導入され、それから10年ほどが経過します。

この無期転換ルールを定めた労働契約法18条1項は、以下のような内容です。

「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。)の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。」

簡単に説明しますと、期間の定めのある労働契約(有期労働契約、例えば1年の契約で更新されている場合等)で働いている場合で、更新によって通算の労働期間が連続して5年を超えた場合には、労働者から雇い主に対して期間の定めのない労働契約に変更するように申込みをしたら、雇い主はこれを拒否できない(当然に期限の定めのない労働契約になったことになる)、という内容です。

またこれに加えて、労働契約法19条では、有期労働契約であっても、一定の要件(過去に反復して契約更新されたことがあり契約満了時に更新せず契約終了することが解雇と社会通念上同視できる、契約期間の満了時に契約が更新されると労働者が期待することに合理的な理由がある)があれば、同一条件での契約の更新を雇い主が拒否することができないとする条文もあります。

雇い止め条項とは

このようなことがあり、企業では、雇い止め条項(契約更新しない条項)/更新上限条項を契約書などに入れることが増えているようです。

このような条項の有効性については、最初の契約の時点で雇用契約書に雇い止め条項や更新上限条項が入っている場合には、労働者はそれも含めて契約するかどうか判断できることから、更新上限を定めることが直ちに違法とはならず、その条項に基づいて雇い止め・契約更新をしないことが認められています(横浜地方裁判所川崎支部 令和3年3月30日判決など)。

これは最初の契約の時から雇い止め条項が入っている場合であり、更新の途中からそのような条項を入れる場合には、労働者の自由な意思に基づくかどうか争われる可能性がありそうです。

労働基準法の改正

このような動きも踏まえて、令和6年4月から労働基準法施行規則5条が改正され、雇い止め・更新上限などに関して、以下のような点を新たに明示しなければならなくなります。

  1. 通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の上限
  2. 就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲
  3. 契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結の場合には無期転換申込みに関する事項等

このような変更はありますが、厚生労働省の調査では、調査対象となった事業所のうち無期転換を申し込む権利を行使した人がいる事業所は35.9パーセント(人の単位では27.8パーセント)で、そこまで多くはないようです。

必ずしも期限の定めのない雇用契約への転換を求める割合は多くはないようですが、このような更新上限などが雇用契約書などで説明されることになれば、この点での問題が増える可能性もありますので、注意が必要でしょう。


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VOL.132 2023/11/1 【雇い止め条項/更新上限条項について】名古屋市の企業法務弁護士に契約・労務問題・顧問のご相談を-愛知県で公開された投稿です。

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取締役退任後・従業員退職後の競業避止義務 ―競業避止義務を定めていない場合― https://www.nagoyasogo-kigyo.com/kyogohisi/ https://www.nagoyasogo-kigyo.com/kyogohisi/#respond Mon, 30 Oct 2023 09:09:22 +0000 https://www.nagoyasogo-kigyo.com/?p=5866 競業避止義務とは 競業避止義務とは、企業の事業と競合するような事業を行ってはならない義務のことをいいます。 法律上の規定としては、株式会社の取締役には、株主総会の承認を受けなければ、自己または第三者のために、会社の事業の … "取締役退任後・従業員退職後の競業避止義務 ―競業避止義務を定めていない場合―"の続きを読む

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れつ

競業避止義務とは

競業避止義務とは、企業の事業と競合するような事業を行ってはならない義務のことをいいます。

法律上の規定としては、株式会社の取締役には、株主総会の承認を受けなければ、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引を行うことができない旨の規定(会社法356条1項1号)があります。

この場合の事業の部類に属する取引とは、株式会社が実際に事業の目的として行っている取引を基準として判断されるものと理解されています。

また、会社に使用されている者(従業員)については、明文化はされていないものの、一般に労働契約中は、労働契約における付随的な義務として、競業避止義務を負っているものと理解されています。

なお、会社によっては、就業規則や、労働契約の内容として、従業員に競業避止義務を課している場合もあります。

退職後の競業避止義務の定めがない場合

それでは、取締役を退任した後や、従業員が退職した後についても、競業避止義務を負うのでしょうか。

そもそも、日本では、基本的人権として、職業選択の自由、営業の自由(憲法22条1項)が保障されています。退職後当然に競業避止義務が課されることになると、これらの自由が制約されることになるため、妥当とはいえません(なお、憲法は、会社と取締役・従業員との関係に直接適用されるわけではありませんが、公共の福祉の観点から、憲法上の権利を侵害することが公序良俗違反として許されない場合があります。)。

したがって、競業避止義務の合意等がない場合には、原則として競業避止義務を負わないものとされています。

もっとも、競業行為が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様による場合には、競業避止義務についての定めがない場合であっても、例外的に不法行為を構成し、損害賠償義務を負う場合があります。

裁判例

この点について、最高裁平成22年3月25日判決(民集64巻2号562頁)を紹介します。

事案としては、産業用ロボットの設計及び製造、金属工作機械部分品の製造等を業とする会社(原告)を退職した従業員が、同社と同一の業務を営む会社において、原告において従事していた作業と同一の技能及びノウハウを必要とする事業に従事しており、その受注先は、主として原告が従前受注していた業者であったというものです。

この事件は控訴及び上告をされていますが、控訴裁判所は、雇用契約終了後においても、当然に競業避止義務を負うものではないが、元従業員等の競業行為が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で雇用者の顧客を奪取したとみられるような場合等は、不法行為を構成することがあるとしたうえで、

被告が在職中に得た顧客情報を利用し、そのことが原告に気づかれないように工作を施していたり、原告の窮状に乗じて売り上げを奪ったり等をして原告に大きな営業損を生じさせ、被告の会社のほぼ全営業を控訴人の従前からの顧客に依存させるような結果を招来したものであり、もはや社会通念上自由競争の範囲を逸脱した行為であると評価せざるを得ないと判示して損害賠償請求を認容しました(名古屋高裁平成21年3月25日判決)。

これに対し、上告審では、控訴審の一般論は否定しなかったものの、被告が不当な方法で営業活動を行ったものとは認められず、原告と取引先の自由な取引が被告の行為によって阻害されたという事情はうかがわれず、被告が退職直後に原告の営業が弱体化した状況を殊更利用したとは言い難い等と認定して原告の請求を棄却しました。

高裁と最高裁の判断が分かれたのは、事実認定において、被告のとった行動が自由競争の範囲を逸脱するほどの違法性があるかどうかについての評価が分かれたためだと思われます。最高裁は、認定された事実では、被告が工作行為をしたことや、原告の窮状を利用したとは認定できないとしたうえで、自由競争の範囲を超えたものではないと判断しています。

反対に言えば、元従業員が前職場と同内容の業務を行い、前職場の取引先が新しい会社の売り上げの8割から9割を占めるようなものであったとしても、それは、競業避止義務についての定めがない場合には、不当な競業行為には該当せず、損害賠償請求等は認められないということです。

上記最高裁判例は、高裁の判断基準を肯定したにとどまり、明示的に退職後の競業行為についての判断基準を示したわけではありませんが、近時の裁判例も同様の判断基準によって判断をしています(東京地判令和4年3月24日、東京地判令和3年2月17日等)。

おわりに

退職後の競業避止義務について定めがない場合における、競業行為についての損害賠償請求ですが、容易には認められるものではありません。

したがって、従業員等が退職した後における、同種の事業を行うことや、引き抜き行為については、一定程度については受け入れざるを得ない部分があります。

なお、競業行為が不正競争防止法に違反するような行為であれば、退職後であったとしても、損害賠償義務や刑事罰等を負う可能性があります。

取締役退任後・従業員退職後の競業避止義務 ―競業避止義務を定めていない場合―名古屋市の企業法務弁護士に契約・労務問題・顧問のご相談を-愛知県で公開された投稿です。

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