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弁護士法人 名古屋総合法律事務所
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vol.34 本号の内容
- 従業員の引抜行為の適法性
- 編集後記
■従業員の引抜行為の適法性
はじめに
近年、優秀な人材の争奪が激しさを増し、企業間における従業員の引抜行為も頻繁に行われています。
わが国では、個人の職業選択の自由、さらには転職の自由が保障されているので、競合する会社よりも良い条件を提示して、優秀な従業員に転職を促す引抜行為も、原則として違法とはなりません。
しかし、優秀な従業員を引き抜かれる側の会社としては、その従業員がいなくなるデメリットはもちろんのこと、その従業員が持つ顧客情報をライバル企業に利用されて、顧客を奪われるリスクもあります。
このように、従業員を引き抜く側と引き抜かれる側の利害は対立しており、従業員の引抜行為の適法性については、多くの裁判例があります。
以下では、従業員の引抜行為のうち、
- 競争会社による引抜行為、
- 在職中の従業員による引抜行為
- 退職した元従業員による引抜行為
の適法性について代表的な裁判例をご紹介します。
競争会社による引抜行為
東京地裁平成3年2月25日判決(昭和62年(ワ)第5470号・第12499号:損害賠償請求事件、反訴請求事件)(ラクソン事件)は、
ある企業が競争会社の従業員に自社への転職を勧誘する場合、
単なる転職の勧誘を越えて社会的相当性を逸脱した方法で従業員を引き抜いた場合には、
その企業は雇用契約上の債権を侵害したものとして、
不法行為として引抜行為によって競争企業が受けた損害を賠償する責任があるものというべきであるとし、従業員の同業他社への大量移籍が、計画的、背信的であるとして、
これを実行した移籍グループのリーダーに雇用契約上の債務不履行ないし不法行為、
移籍グループを引き抜いた企業に不法行為責任が成立するとしました。
在職中の従業員による引抜行為
前記ラクソン事件で東京地裁は、幹部従業員による引抜行為ついても以下のように判示しています。
1 会社の従業員は、使用者に対して、雇用契約に付随する信義則上の義務として、
就業規則を遵守するなど労働契約上の債務を忠実に履行し、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならない義務(「雇用契約上の誠実義務」といいます。)を負い、従業員が同義務に違反した結果使用者に損害を与えた場合は、その損害を賠償すべき責任を負うというべきである。
2 個人の転職の自由は最大限に保障されなければならないから、
従業員の引抜行為のうち、単なる転職の勧誘に留まるものは違法とはいえず、したがって、右転職の勧誘が引き抜かれる側の会社の幹部従業員によって行われたとしても、右行為を直ちに雇用契約上の誠実義務に違反した行為と評価することはできないというべきである。
しかしながら、その場合でも、退職時期を考慮し、あるいは事前の予告を行う等、会社の正当な利益を侵害しないよう配慮すべきであり・・・、これをしないばかりか会社に内密に移籍の計画を立て一斉、かつ、大量に従業員を引き抜く等、
その引抜が単なる転職の勧誘の域を越え、社会的相当性を逸脱し極めて背信的な方法で行われた場合には、それを実行した会社の幹部従業員は雇用契約上の誠実義務に違反したものとして、債務不履行あるいは不法行為責任を負うというべきである。
退職した元従業員による引抜行為
元従業員が、会社との間で退職後も競合する業務を行ってはならないという競業禁止特約を締結していて、その特約が有効である場合は、同特約違反を理由として損害賠償しなくてはならない可能性があります。
そこで、いかなる場合に競業禁止特約が有効とされるかが問題となりますが、
奈良地裁昭和45年10月23日判決(昭和45年(ヨ)37号不正競業行為禁止仮処分命令申請事件)は、制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、企業秘密の保護、転職、再就職の不自由及び社会的利害(独占集中の虞れ、それに伴う一般消費者の利害)の3つの視点に立って慎重に検討していくことを要するとしています。
同裁判例は、従業員の退職後の競業は、職業選択の自由により、原則として自由であることを重視して、競業禁止特約の有効性を厳しく判断しているものと考えられます。
おわりに
従業員の引抜行為の適法性については、引抜行為の主体や、引き抜かれる従業員の属性、引抜行為の態様など、様々な要素を検討して、法的評価を考えなくてはなりません。
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編集後記
こんにちは。すっかり初夏の気持ちで衣替えを終えたのですが、長袖をしまうのは早計だったようです。夕刻は肌寒く、風が強く吹いたり、雨足が強まったり・・そうです、梅雨の季節の到来ですね。
日よけの帽子でも買おうかしらと思っていた矢先に、折りたたみの傘が壊れてしまいました。
まずは傘を買うのが先ですね、、。
お買い物と言えば、みなさんはお買い物のお支払いはどうなさっていますか?
私はデビットカードを頻繁に使用しています。
銀行口座から直接、リアルタイムで引き落としされます。
ですから、ATMで現金をおろす手間が省けます。また、クレジットカードのように、次の月、忘れた頃に請求を見て、ヒヤッとすることがないのです。
イオンの「ワオンカード」、「manaca」や「TOICA」などの共通乗車カードのように、ピッとかざして支払うのも、簡単でいいなと思います。
私はお財布の小銭をジャラジャラと見渡して、おつりを計算するのがとても苦手で、いつもモタモタしてしまうのです。
「Apple Pay」はApple社の、iPhoneによる決済サービスだそうです。
また「Google」にも、「Google Wallet」というお財布サービスがあるようです。
どちらもまだ、日本国内ではあまり普及していないようです。
海外では使用されているそうですから、日本にも広まるかもしれませんね。
今は世界中の人が、PCやスマホのインターネットショップからグローバルにお買い物をする時代ですから、電子マネーで通貨のやりとりがスムーズにできることが求められているのですね。
支払い方法の選択肢が増えてくると、入出金の管理も複雑になります。
用途にわけて、支払いツールを整理整頓していきたいなと思います。