著作権の制限 著作権の保護期間

1. はじめに

ここでは、著作権が成立していて、本来ならば、著作権者の承諾を得なければできない行為を、例外的に、承諾なしで行える場合について述べます。

具体的には、著作権の権利制限規定(著作権法(以下、「法」ともいいます。)において、著作権の効力が及ぶ範囲を制限している規定をいいます(法30条以下。)。)と、著作権法の保護期間について述べます。

protection

2. 著作権の権利制限

⑴ 制限規定が置かれる目的

確かに、著作権者の利益を保護して、文化の発展に寄与するためには(著作権法1条参照)、著作権法上規定された行為を行うに際して著作権者の承諾を得なければならないとすることは、必要不可欠です。

ただ、一方で、常に承諾を要求すると、著作物の円滑な利用が妨げられたり、常識的な利用も否定されることとなります。そうすると、むしろ文化的発展は妨げられることとなり、著作権法の目的に反する結果となってしまいます。

そこで、著作権法は制限規定により著作権者の承諾が不要である場合を作り出すことで、そのバランスをとっているのです。

⑵ 具体的制限規定

具体的な制限規定としては、以下のものがあります。

  • 私的利用のための複製(法30条)…家庭内等での利用目的のための複製
  • 付随対象著作物の利用(法30条の2)
    …写真の撮影等において、撮影対象と分離することが困難な著作物の利用
  • 検討の過程における利用(法30条の3)
  • 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用(法30条の4)
  • 図書館等における複製(法31条)…図書館側の、利用者の求めに応じた複製
  • 引用(法32条)…自己の著作物内で、他の著作物を引用して利用する場合
  • 教育目的の複製(法33条~36条)…教科書用図書等への掲載等
  • 福祉目的での複製(法37条~37条の2)…著作物を点字に変更し、それを送信する場合等
  • 非営利目的の上映等(法38条)…報酬や対価を得ずに行う上映や放送等。
  • 時事問題に関する論説の転載等(法39条)
  • 報道目的での複製(法40条,41条)
  • 裁判手続等における複製(法42条)
  • 美術・写真・建築の著作物(法45条~47条)
  • プログラムの著作物(法47条の2)

⑶ ここでは、上で挙げた物の中から、問題となりやすいものとして、私的利用のための複製と引用について少し詳細に述べます。

⒜ 私的利用(法30条)
私的領域内で行われる複製まで禁止すると、行動の自由が過度に制限されること、個人的・家庭内での利用は著作権者に与える経済的不利益が大きくないこと等の趣旨から本規定は置かれています。具体例としては、テレビ番組の録画等が挙げられます。
ただ、このような理由から私的利用が認められる以上、著作権者に与える経済的不利益が大きい場合、たとえば、レンタルCDショップにおいて客が利用できるように複製機を設置し、客が私的利用のために音楽を複製するような場合には本規定は適用されず、原則通り、著作者の承諾が必要になります(法30条1項1号)。
⒝ 引用(法32条)
ここで典型例として想定されているのは、論文において、他の論文を批評する場合等です。必要な限度で既存の著作物の利用を認めて新たな文化活動を促進させることがむしろ文化の発展という目的に適うことから、制限規定が設けられました。
引用にあたるといえるためには、判例(最高裁S55.3.28 第三小法廷判決)により定められた以下の引用要件を充足することが必要になります。
  • 主従関係…自己著作物が主で、引用する著作物が従という関係にあること
  • 明瞭区別性…自己著作物と引用部分が明瞭に区別して識別できること

3. 著作権の保護期間

⑴ 保護期間が設定される目的

いつまでも著作権が認められるとすると、未来永劫その著作物の自由な利用はかなわず、文化の発展という観点からは不都合です。一方で、期間制限を設けたとしても、必要十分な期間さえ確保されていれば著作権者としては十分に利益を得ることができます。このような考慮から、著作権は一定期間に限り存続するものとされています。

⑵原則

まず、原則は、創作時に著作権が成立し、著作者の死後50年を経過するまで存続することとされています(法51条)。
以下に挙げる例外規定が適用されない限り、この原則によることとなります。

⑶ 例外規定

⒜ 無名または変名の著作物(法52条)
この場合、著作権は、その著作物が公表されてから50年が経過するまで存続します。原則と比較して、存続期間の始点が早められているのは、無名・変名であれば、著作者がわからず、著作者の死亡時点が特定できないからです。したがって、無名・変名であったとしも、著作者が周知になっている場合には、本条の適用はなく、原則通りの扱いとなります。
⒝ 団体名義の著作物(法53条)
法人その他の団体が著作の名義を有する場合、著作物の公表から50年が経過する時点まで著作権が存続します。ただ、創作時点から50年間公表されない場合には、創作後50年間のみ存続します。
これは、団体においては、死亡を観念しえないことを考慮した規定です。
⒞ 映画の著作物(法54条)
映画著作物は公表から70年間が経過するまで、著作権が存続します。ただし、創作後70年以内に公表されなかった場合には、創作時から70年間、存続します。
これは、映画には多大なコストが投入されることを考慮した規定です。
⒟ 継続的刊行物等の公表の時(法56条)
継続的刊行物の公表時点が問題となる場合についての規定です。雑誌等のように号を追って公表される著作物は、各号の公表時点をその著作物の公表時点とします。対して、一部分ずつを順に公開して完成する著作物については、最終部分の公表時点とされています。

ご相談の流れはこちら