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VOL.135 2024/2/5 【専門業務型裁量労働制に関する法改正情報 -準備されていますか?2024年4月労働基準法改正-】


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vol.135本号の内容

2024年2月5日

  • 専門業務型裁量労働制に関する法改正情報 -準備されていますか?2024年4月労働基準法改正-

名古屋総合社労士事務所
社会保険労務士 増田友子

専門業務型裁量労働制に関する法改正情報
-準備されていますか?2024年4月労働基準法改正-


はじめに

裁量労働制を導入されている会社の皆様、2024年(令和6年)4月1日から、裁量労働制の運用が変更されます。

2023年(令和5年)3月30日の官報において、労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第39号)」が公布されました。

2024年(令和6年)4月1日以降、新たに又は継続して裁量労働制を導入するためには、以下の事項を必ず追加し、裁量労働制を導入・適用するまで(継続導入する事業場では2024年(令和6年)3月末まで)に所轄労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要があります。

今回は、裁量労働制の中でも比較的導入割合の多い、専門業務型裁量労働制に関し、法改正情報をお知らせします。

裁量労働制とは

そもそも、裁量労働制とは労働時間の算定に際し、あらかじめ会社と労働者で協定した時間数労働したものとみなし、そのみなし時間分の賃金を支払う制度のことです。

業務の性質上、その遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要があるために、使用者(会社)が具体的な業務遂行方法等を指示をすることが困難もしくは具体的な指示をしないこととする業務形態について、労使協定で定めた時間を労働したとみなす制度となります。

したがって、裁量労働制を自社に適用させるためには、まずは、

  • ・就業規則に裁量労働制の根拠規定を定める
  • ・労使協定を締結し労働基準監督署に届出る
  • ・労働者個人へ裁量労働制を適用する旨の労働条件の提示をする
ことが必要です。

厚生労働省 裁量労働制の解説: https://www.mhlw.go.jp/content/001166653.pdf

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の2種類があり、それぞれの導入要件が定められています。

法改正による変更点 その1

専門型裁量労働制は、法律で定められた19の業務についてのみ適用が認められていましたが、今回の法改正で新たにM&Aアドバイザリー業務が追加されました。

法改正による変更点 その2

専門業務型裁量労働制の労使協定において、協定しなければならない事項が以下のように追加されました。つまり、今回の法改正により、裁量労働制を運用するにあたり、会社がしなければならない事項が増え、当該制度を適法に運用するハードルが上がった、と考えられます。

  1. 制度の導入にあたり、本人同意を得ること
  2. 制度の適用にあたり、労働者が同意しなかった場合に不利益な取り扱いをしないこと
  3. 制度の適用に関する同意の撤回の手続を定めること
  4. 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後5年間(当面の間は3年間)保存すること
  5. 健康・福祉措置に関する事項の追加

1について、これまでは専門業務型裁量労働制の導入にあたり、労働者個別の同意までは求められていませんでした。しかし、今回の法改正で、専門型においても労働者の同意を得ることが必要になりました。これには、書面交付によるもの、電子メールやイントラネットを介した方法によるものでもよいとされています(令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A:
https://www.mhlw.go.jp/content/001164350.pdf)。

ここで重要な点は、労働者が確実に裁量労働制の制度内容を理解することが出来る手段で会社が説明し、その上で、労働者の自由意思による同意を得ることが適切とされていることです。労働者が十分に制度を理解しないままに、会社が当該制度を導入し、みなし時間を基礎に賃金支払を継続していても、法的には労働時間のみなし効果が発生しない可能性があるということです。

2および3について、同意しないことや、一度同意したものの、のちにその同意を撤回する場合、その申し出方法、申し出先となる部署名、担当者、同意の撤回方法等をあらかじめ具体的に明らかにすることが必要とされています。さらに、不同意や同意の撤回をした労働者に対して、それを理由として不利益な取り扱いをしてはならないものとされています。

4について、同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を、その労働者ごとに労使協定の有効期間中及びその満了後5年間(当面は3年間)保存することを、労使協定に定めることが加えられました。

5について、裁量労働制を導入するためには、以前より労働者に対して健康・福祉措置を講じることが求められていましたが、今回の法改正で新たに以下の項目を「健康・福祉措置」として定めることが適切であると定められました。


※改正後の「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」

事業場の対象労働者全員を対象とする措置
(イ)勤務間インターバルの確保
(ロ)深夜労働の回数制限
(ハ)労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
(ニ)年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めたその取得促進

個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置
(ホ)一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
(ヘ)代償休日又は特別な休暇の付与
(ト)健康診断の実施
(チ)心とからだの健康問題についての相談窓口設置
(リ)適切な部署への配置転換
(ヌ)産業医等による助言・指導又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

(イ)から(二)までの措置、(ホ)から(ヌ)までの措置をそれぞれ1つずつ以上実施することが望ましいことに留意することが必要です。(このうち、特に把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、(ハ)を実施することが望ましいとされています。)

さいごに

裁量労働制を導入するにあたっては、多くの要件、手続きが必要であり、その運用も簡単なものではありません。しかし、制度を上手に利用し、適切な労務管理を行うことが出来れば、労使双方にメリットがあり、労働者のモチベーションをUPさせることが出来る可能性も十分にある制度となっています。

制度導入の要件、リスクとメリットデメリットをしっかりと理解して、より良い労働環境が形成されることを目指し、制度を活用していきましょう。


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