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VOL.101 2020/11/11【従業員のミスに対する賠償請求とその限度】


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vol.101 本号の内容

2020年11月11日

  • 従業員のミスに対する賠償請求とその限度

名古屋総合法律事務所
弁護士・税理士 杉浦 恵一

従業員のミスに対する賠償請求とその限度

はじめに

会社でも個人事業でも、事業の規模が大きくなりますと、従業員を雇うこともあろうかと思われます。

事業の規模が大きくなるにつれて、従業員の数も増えていくことになると思いますが、従業員の数が増えるほど、どうしても従業員の起こすミス、失敗も増えることが一般的です。

そのミスが会社内のフォローで収まる範囲であればいいのですが、どうしても他社、会社外部にまで損害を与え、結果として会社・事業者が損害賠償責任を負わざるを得ない場合も出てきます。

このような場合に、会社・事業者は、従業員に対して、発生した賠償額の全額の支払いを求めることができるのでしょうか。

従業員のミスに対する損害賠償の裁判例

この点については、これまでに多数の裁判例が出されております。

一般的な傾向では、従業員のミスによって会社・事業者に賠償責任が生じたとしても、事業者が支払った賠償額の全額を従業員に負担させることは認められていません。

理屈としては、ある事業に従業員が従事して利益を上げた場合、その利益は事業者に帰属し、従業員は全ての利益を得られるわけではありませんが、ある事業に関して賠償責任が発生した際に、従業員が全て賠償するのは、公平に反するという理屈です。

例えば、過去の裁判例では、会社所有の自動車を運転し、運搬の仕事をしていた際に、従業員が不注意で前を走っていた自動車に車をぶつけてしまったという場合、従業員には損害の4分の1を負担するように命じた裁判例があります。

このような点からしますと、ミスによる損害に関しては、従業員の立場やミスの程度(ミスが重大か、軽微か)といった点を考慮して、負担割合が分かってきそうです。ミスが重大(よく注意していれば避けられた)であれば、従業員の負担割合も増える傾向にあるでしょう。

従業員側に過失がある場合

ただし、先に述べたことはあくまで従業員のミスによる場合です。

例えば、従業員が会社の商品や預金を横領した場合、給料や経費を水増し請求するなど不正な利益を得た場合には、わざとやっているわけですから、単純なミスではなく、従業員は不正に得た利益の全額を賠償する必要があると考えられています。

このように、従業員のミスなのか、従業員がわざとやっているのかは、分ける必要があるでしょう。

会社側の対応

では、従業員にミスがあり、いくらか負担させることができるとして、どのように従業員から支払ってもらうのでしょうか。

予めミスをしたらいくら賠償すると決めておき、給料から天引きすることが簡単だと考え、そのようにしている会社もあるかもしれません。

しかし、労働基準法の第16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めています。

そのため、あらかじめ賠償する額を会社・事業者において決めてしまうと、この条文に反するということで、そのような取り決めは無効になる可能性があります。

また、労働基準法の第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とされています。

そのため、給料から一方的に天引きしますと、給料の直接払い・全額払いのルールに反するということで、それも無効となり、返金しなければならない可能性が出てきます。

まとめ

天引き・相殺はできる限り避けた方がいいのですが、どうしても給料と相殺したいという場合には、賠償責任のあるミスが分かった後、負担割合を取り決め、給料と相殺する合意書を作成し、天引きするなど、従業員の自由な意思で行ったという証拠を準備しておく方がいいでしょう。

このような場合でも、後で従業員からは、一方的に相殺された、天引きされたと主張されることがありますので、注意が必要です。


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