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2025年9月17日
名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦恵一
昔は結婚や出産によって職場を離職される女性が多かったと思われますが、近年では法整備や体制の整備も進み、出産に伴う育児休業後、復職をする例が一般的になってきていると思われます。
他方で、育児休業から復職する際には、子供がまだ幼く、時間短縮の勤務を希望する方も多いのではないかと思われます。
勤務形態がフルタイムから時間短縮勤務になりますと、雇用する企業としても従業員をどのように適正に配置をするかの問題があり、このような育児休業からの復職後の職場トラブルが増えている傾向にあるようです。
期限の定めのない正社員として雇用契約をしている場合、原則として企業側には広い人事権があり、従業員の同意がなくても異動を命じることが認められる場合が多いでしょう。
ただし、近年では職種限定の合意や勤務地限定の合意をすることも増えてきているようです。このような場合には、雇用契約の内容を優先し、合意した以外の職種や勤務地への異動・配置転換が認められない場合もあります。
次に、企業側に広い人事権があるとしても、異動や配置転換が人事権の濫用に当たらないか、の問題があります。
異動や配置転換が業務上の必要性を欠くような場合、もしくは不当な動機・目的(例えば従業員を退職させようと考えての異動等)があるような場合、通常なら受け入れるべき程度を著しく超えるような不利益が生じる場合(例えば従業員が介護等の理由で自宅を離れられない場合等)、異動・配置転換が人事権の濫用だとして無効になる場合もあり得ます。
このような問題がないとしても、育児休業後の復職の場合には、法令上の問題があります。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の第10条では、労働者が育児休業の申出、もしくは育児休業をしたこと等(厚生労働省令で定めるもの)を理由として、そのような労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない、と定められています。
また、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)の第9条3項では、事業主は、雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと等の妊娠又は出産に関する事由(厚生労働省令で定めるもの)を理由として、その女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない、と定められています。
このような特別法による不利益取扱禁止の定めがありますので、このような法令にも該当しないかを検討する必要があります。
厚生労働省のQ&Aによれば、妊娠・出産・育児休業等の事由を契機として(注:「契機とする」とは、妊娠・出産・育児休業等の事由の終了から1年以内を指すと解釈されているとのことです)、労働者に不利益な取り扱いがなされた場合には、原則として妊娠・出産・育児休業等を理由として不利益な取り扱いがなされたと解釈することになる旨、解説されています。
ただし、解釈・この扱いは必ずそうなるわけではなく、例外として、業務上の必要性から不利益な扱いをせざるを得ない状況であり、かつ業務上の必要性が不利益な取り扱いにより受ける影響を上回る場合には、不利益な取り扱いもやむを得ない、と考えられています。
最高裁判所 平成26年10月23日判決の事例(医療機関に勤めていた理学療法士の女性が、妊娠した際に軽易業務への転換を求めたことを理由に、副主任から降格させられたことについて、妊娠等による不利益取扱に当たるとして訴えられた事例)では、最高裁判所は、業務上の必要性からの支障があり、必要性の内容、程度、有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、法令の趣旨・目的に反しないと認められる特段の事情があるか否かという枠組みで判断をしています。
結果として、この事例では、十分に審理が尽くされていないとして、原審(控訴審)へ差し戻しがされております。
また、近時の例であれば、東京地方裁判所 令和5年4月27日判決の事例(営業管理職であった者が育児休業後に復職したが、一人も部下を付けられずに新規販路の開拓業務をさせられたという事例)では、裁判所は、基本給や手当等の面で直ちに経済的な変更を伴わない配置変更であっても、業務の内容面で質が著しく低下し、将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものについては、労働者に不利な影響を与える処遇となるとして、結論的には慰謝料の支払いを認めています。
このように、育児休業復帰後の配置転換については、様々な問題が考えられるところですので、扱いに注意が必要でしょう。
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