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VOL.39 2015/08/24 【内定取り消しの違法性】


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vol.39 本号の内容

2015年8月24日
                          
  • 内定取り消しの違法性
  • 編集後記

■内定取り消しの違法性

某テレビ局から内定をもらっていたにもかかわらず、学生時代に銀座のクラブでホステスをしていたことを理由に内定を取り消された女子大生が、採用内定者としての地位確認訴訟を起こしたという報道を覚えている方も多いのではないでしょうか。

この訴訟では和解が成立し、内定を取り消された女性は、今ではアナウンサーとして活躍しています。

内定を出した後に、会社にとって内定を取り消したい事情が判明した場合、いかなる事情であれば内定を取り消すことができるのかという問題は、会社の人事担当者にとって重大な関心事であることと思われます。 

参考事例: 最高裁判所による判断基準

内定取消しの適法性について、実務上重要な判断を示したのが、大日本印刷事件(最高裁判所第二小法廷昭和54年7月20日判決)です。

(1)事案の概要

当事者の学生(X)が所属していた大学では、就職の推薦が2社に限定されており、学生は、一方の会社から内定通知を受ければ、もう1社に対する応募を辞退し、大学も推薦を取り消すという運用がなされていました。大日本印刷(Y)も、大学のその運用を知っていました。

Xは、大学の推薦を利用して2社に応募し、Yから先に内定をもらったので、もう1社への応募を辞退し、大学もその会社への推薦を取り消しました。しかし、Yは、突如としてXの内定を取り消し、その内定取消通知が遅かったこともあり、Xは他社に就職できないまま大学を卒業してしまいました。

そこで、Xは、Yを相手取り、雇用関係の確認と、未払賃金の支払を求める訴訟を提起しました。第1審、控訴審ともXが勝訴したため、Yが上告しました。

(2)判断基準と帰結

Yは、Xがグルーミー(陰気)な印象のために当初から不適格と考えていたものの、それを打ち消す材料が出る可能性があるため採用内定にしておきました。しかし、その後不適格性を打ち消す材料が出なかったという理由で、Xの内定を取り消しました。

最高裁は、「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である」という判断基準を示しました。

最高裁は、Xのことがグルーミーだと当初から分かっていたならば、その段階で従業員としての適格性の有無を判断すべきであったのであり、内定を出した後に不適格性を打ち消す材料がなかったことを理由に内定を取り消すことは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認できず、解約権の濫用であるとして、Yの上告を退けました。

まとめ: 慎重な法的検討が必要

上記判決によると、会社が内定を出す段階で知っていた事情や知りえた事情を理由に、内定取消をすることはできないこととなります。また、会社が、内定を出す段階では知らなかった事情や知りえなかった事情を理由に内定を取り消す場合でも、解約権留保の趣旨や目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当である必要がある、と判示しています。

内定者は、採用内定により当該企業への入社を期待し、他企業への就職の機会を放棄することが一般的であり、一度出された内定が取り消されると、大きな不利益を受けることになります。

「解約権留保の趣旨や目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当であること」という基準は、抽象的で分かりにくいかもしれませんが、内定後に判明した事情が重大、悪質であり、これによって内定者の適格性が十分に疑われることが必要である、と考えられます。

このように、内定取消しの適法性の判断は、様々な事実をもとに法的検討をすることが求められ、大変難しいものです。内定取消についてお悩みの場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。


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編集後記

残暑お見舞い申し上げます。

皆様は、高野山に行かれたことがありますか? 紀伊山地の一角、和歌山県北部の標高約900メートルに、人口3,300人ほどの山上都市があります。そこは、平安時代に弘法大師空海が開いた真言密教の聖地であり、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコに登録された世界遺産でもあります。

山上には、金剛峯寺を中心に100を超える寺院が並び、約1,000人もの僧侶による修法・修行が続けられ、空海の真筆をはじめ様々な彫像・絵画など、数々の国宝級文化財が保管されています。レトロな雰囲気の町並みには、大正から昭和初期の近代建築である「駅舎」「交番」(国の有形文化財)などが今も現役で残り、幼稚園から大学、銀行や商店なども揃っています。

奥の院地区の最奥には、古代日本文化・思想に大きな影響を及ぼし、今も人々の救済を願い続けるとされる弘法大師空海が祀られています。その参道には、東海地方の「三英傑」はじめ戦国武将たち、鎌倉新仏教開祖たちの供養塔や廟、与謝野晶子や司馬遼太郎の碑、現代諸企業の供養塚などが、老杉木立の間に所狭しと並んでいます。

開創1200年目の今年、様々な記念行事が行われる高野山には、国内はもとより海外各地から、宗派を超えて多くの参拝客・観光客が訪れています。奥の院や壇上伽藍、観想道場、宿坊、精進料理店、そしてロープウェイやバスの車内・・・あちらこちらで各国語が飛び交います。日中の気温が平野部と比べて7~8℃低く、真夏でも朝晩は肌寒いほどの山上に、涼を求める人々も数多く見受けられます。

名古屋周辺も厳しい残暑が続きますが、大自然の中の歴史・文化的世界遺産を訪れてみるのはいかがでしょうか。皆様、どうぞ体調など崩されませぬよう、お願い申し上げます。

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