ホーム >  メールマガジンバックナンバー >  VOL.125 2023/2/13【刑事事件と民事事件の情状酌量】

VOL.125 2023/2/13【刑事事件と民事事件の情状酌量】


弁護士&社労士&税理士&司法書士が教える! 企業法務・労務・税務・登記に役立つ法律情報

弁護士法人 名古屋総合法律事務所


経営者、企業の法務担当者・人事労務担当者・管理部門担当者の皆さまがビジネスで必要な法律・労務・税務・登記知識を、無料のメールマガジンとして提供させていただきます。
法律のプロだからこそ話せる実際の事例や最新の法律にまつわる情報を「分かりやすさ」と「実践性」に主眼を置いて、月1回お届けします!

vol.125本号の内容

2023年2月13日

  • 刑事事件と民事事件の情状酌量

名古屋総合法律事務所
杉浦恵一

刑事事件と民事事件の情状酌量


はじめに

近時、飲食店で食品や備品に対して不衛生な行為を行い、それを録画した動画が拡散され、刑事事件・民事事件化する例が発生しています。

加害者・行為者が未成年の場合、情状酌量の余地があるのではないかという意見も聞かれるようですが、情状酌量というのは法的にどのような意味なのでしょうか。

これは、刑事事件と民事事件で変わってきます。

(1) 刑事事件での情状酌量

食品や備品に対する不衛生な行為を行うことは、刑事事件としては業務妨害に該当することが考えられます。

刑事事件では、国が加害者・行為者に対して刑事罰を科すことになっていますが、その目的は諸説があります。

代表的なものとしては、刑事罰を科すことで本人の更生や再犯の防止を目的とすること、刑事罰が科されることが周知されることで犯罪を抑止する、被害者(や遺族)の報復・復讐を国が代わって行う、といったような説があります。

そもそも刑事事件の罰は、例えば「死刑、無期懲役、又は●年以上の懲役」であったり、「●年以下の懲役」となっているなど、刑法で刑罰の種類や懲役等期間の上限・下限は定められていますが、その範囲の中で何を選択するかは、裁判官に委ねられています。

そのため、情状酌量という点では、裁判官が定められた刑罰の範囲内で軽いもの、短い期間を選択する、という方法が考えられます。

また、刑法では、第25条で刑罰の執行猶予が定められており、第42条で捜査機関に発覚する前の自首による減軽が定められており、第67条で酌量減軽が定められています。

そのため、刑事事件では、色々な理由による情状酌量は、刑罰の減軽や執行猶予という方法で行われます。

ただし、例外を除いて刑事裁判は検察官が起訴した場合しか行われませんので、検察官が起訴しないという形で情状酌量がなされることもあります。

(2)民事事件での情状酌量

これに対して民事事件では、明確な情状酌量は定められていません。

民事事件は、法律関係の有無や法律上の権利の有無を確定するための手続ですが、例えば損害賠償を請求する際には、民法417条で「損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。」とされているように、金銭賠償の原則があります。

損害賠償は、あくまで発生した損害しか請求できず、海外にあるような懲罰的損害賠償の制度は現行の日本法にはありません。

逆に、情状を考慮して損害賠償額を減額することができるという規定も、民法に明確にあるわけではありません。

情状酌量に近いような民法の条文としては、以下のような例が挙げられます。

  • 民法1条3項(権利濫用)
    「権利の濫用は、これを許さない。」
  • 民法90条(公序良俗)
    「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
  • 民法418条(過失相殺)
    「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」

このような民法の条文がありますので、事情によっては法律行為(契約・合意など)が無効になったり、過失の程度によっては損害賠償額が減額される場合はありますが、裁判官の全面的な裁量的減額を認めるような条文はありません。

<おわりに>

このように、刑事事件では情状酌量が認められる余地はありますが、民事事件ではあくまで損害を補填・賠償してもらうことが主目的の私人間の争いですので、情状酌量に対する考え方に違いがあります。


次のようなご心配事がある場合は、名古屋総合リーガルグループがお役に立てますので、ぜひお電話ください。

  • 労務問題が心配なので、雇用契約書と就業規則について相談したい。
  • 従業員を解雇しなければならないが、どのようにしたらよいのか。
  • 従業員から残業代を請求されて困っている。
  • お客様・営業先からクレームを受けて困っている。
  • 契約書を作ったのでチェックしてほしい。
  • 取引先から契約書をもらったが、不利なものでないか不安なので相談したい。
  • ネット上で悪い評判を書かれて困っている。
  • 売掛金を回収したい。
  • 新しい事業を考えているが法的に気をつけるべき点を相談したい。

当事務所のご相談受付はこちらです。お気軽にお問合せ下さい。

⇒ ご相談のご予約 052-231-2601

または、メールフォームからお願いいたします。


弁護士法人名古屋総合法律事務所および税理士法人名古屋総合パートナーズはともに経営革新等支援機関に認定されています。

名古屋総合リーガルグループでは、中小・中堅企業の実情も十分考慮した上で、企業が抱える労務問題、取引先や顧客からのクレーム・トラブル、著作権侵害などのリスクから会社を守る方法を提案しています。

残業代やセクハラ、解雇やうつ病などの労務問題に頭を抱えていらっしゃる経営者様も多いと思います。

多くの問題は、法律の知識をもって対策をしておくことで未然に予防することができます。

顧問契約等の制度を利用していただければ、わざわざ来所していただかなくても電話やメールで気軽に相談していただくことができます。

ぜひ下記からお気軽にご連絡下さい。

▼法人様向けホームページはこちら
https://www.nagoyasogo-kigyo.com/

▼私たちが企業法務で選ばれる理由
https://www.nagoyasogo-kigyo.com/reason/

▼顧問契約をお考えの方はこちら
https://www.nagoyasogo-kigyo.com/general-counsel/

メールマガジンバックナンバーへ戻る

ご相談予約はこちらまで/お電話でのお問い合わせはこちら/TEL.052-231-2601/相談時間/平日 9:00-18:00/土曜 9:30-17:00/夜間 火曜・水曜 17:30-21:00/ご相談の流れはこちら

ご相談の流れはこちら

業務案内

電話・オンライン相談はじめました

マチ工場のオンナ

名古屋総合法律事務所の理念

解決事例

企業法務ブログ

経営品質・人材育成ブログ

-->