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VOL.136 2024/3/4 【一度行った相続放棄は取消ができるのか】


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vol.136本号の内容

2024年3月4日

  • 一度行った相続放棄は取消ができるのか

名古屋総合法律事務所
弁護士 杉浦恵一

一度行った相続放棄は取消ができるのか


はじめに

相続が開始された際に、財産よりも借金の方が多く、相続の放棄をされる方もいらっしゃると思われます。

令和4年では、相続放棄の件数は約26万件くらいあるようです。

相続を放棄することで最初から相続人ではなかったことになり、プラスの財産もマイナスの負債も、どちらも相続せず、引き継がないことになります。

相続放棄には条件が特にありませんので、財産があってもなくても、負債があってもなくても、任意にすることができます(※期間制限はあります)。

そのため、他の相続人から借金があると聞かされて相続放棄をしたものの、実はそれを上回る財産があるなどの事情で、後から相続放棄をしなければよかったという場合もあるかもしれません。

相続放棄の取消

相続放棄は、裁判所が受理をするまでは取下げをすることができます。

しかし、以下の通り、一度受理がされてしまいますと、撤回することができなくなります。
民法919条1項「相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。」

しかし、撤回はできなくても、場合によっては取消をすることが認められています。
民法919条2項「前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。」

例えば民法総則の規定による取消とは、錯誤による取消(改正後の民法95条)、詐欺又は強迫による取消(民法96条)といったものが挙げられます。

このような取消は、いつまでもできるというものではなく、追認をすることができるとき、つまり取消の原因となっていた状態が解消されたときから6か月を経過した場合や、相続放棄の時から10年を経過した場合には、時効によって取り消すことができなくなります。
民法919条3項「前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。」

そのため、いつまでもできるという訳ではなく、また民法の規定に基づく要件を満たす必要がありますが、裁判所に相続放棄の取消の申述をして、裁判所が認めた場合には、相続放棄を取り消すことができます。

古い裁判例ですが、相続放棄の申述は、第三者の欺罔(つまり騙したこと)によるものだとして、相続放棄の申述の取消を認めた例があります(東京高等裁判所平成27年7月22日決定)。

相続放棄の効力が認められない場合

これ以外に、相続放棄の効力が認められないと思われる場合もあります。

例えば、民法921条では、相続人が単純承認をしたとみなされる場合として、以下のような場合を挙げています。
1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
2 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
3 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

相続の放棄をした後であっても、相続人が相続財産の全部又は一部を消費した場合が挙げられていますので、後になって相続放棄を取り消したいと思った相続人が、その目的で相続財産の一部を消費したような場合、相続放棄の取消と同じような効果が得られる可能性も考えられますし、もしくは信義則違反などでそのような効果は主張できないことも考えられます。


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