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業種によっては業務提供を断ることができない場合

弁護士 杉浦 恵一

れつ

企業がサービスを提供したり、物品を売ったりする場合、日常的にはあまり意識されていませんが、これらは契約によります。
何らかのサービスを提供する場合には、委任契約・業務委託契約・請負契約などの類型があり、物を売る場合には売買契約などの類型があります。

このように、一般的な商業活動では、基本的には契約に基づいて活動されています。

1. 契約とカスタマーハラスメント

契約の場合、当事者は対等であることが原則です。「お客様は神様です。」といった言葉もありますが、契約は対等である以上、契約することを断ることもできます(ただし差別的な対応の場合、その対応が不法行為に当たるかどうかは別の話になります)。

例えば「出入り禁止」は、包括的にサービスの提供を事前に断ることの例です。
最近では、カスタマーハラスメント(顧客が企業等に対して理不尽なクレーム・言動・要求等をする嫌がらせ行為)の問題が提起されています。

人手不足により企業は人材を採用しにくくなっていますが、カスタマーハラスメントから従業員を守ることができず、離職率が高い職場があることも指摘されています。

このような観点から、契約当事者が対等であるということで、企業が消費者にサービスの提供を断ることも広がってくるでしょう。

2. 業務提供を拒否できない業種もある

最近の報道で、旅館業法の改正のニュースが報道されていましたが、その内容は宿泊拒否の要件に関する法改正があったというものです。
特定の業態では、契約当事者の平等・契約自由の原則の例外として、サービスの提供を拒むことができないことが、一定の業法で定められている例があります。

例としては、

医師法19条1項

「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」

道路運送法13条

「一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ。)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。」

旅館業法5条

「営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。」

医師法では「正当な事由」がある場合、道路運運送法や旅館業法では一定の列挙された理由に該当する場合、サービスの提供を拒否することが可能ではあります。

しかし、これまではその範囲が狭かったり、その理由が不明確だということで、顧客との間でトラブルになることもあったようです。

また、昨今の新型コロナウイルス感染症が広がった際には、感染症対策への協力をしないことで宿泊拒否や乗車拒否ができるのかどうか、という問題も出ていたようです。

このような問題を受けて、旅館業法に関しては、原則として宿泊拒否が禁止されるという体系は残したものの、宿泊を拒否することができる事由・要件を緩和した、という流れです。

おわりに

このような法律が制定された頃と社会の状況が大きく変わってきており、サービスの提供の拒否を禁止する理由がなくなってきている場合もありそうですが、公共性のある事業に関しては、今後も一定のサービス提供拒否の禁止は残るのではないかと思われます。

事業を行う場合、その事業特有の規制がないかどうか、確認する必要があるでしょう。

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