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株主総会における議決権の代理行使

弁護士 岬 宏美

日本は3月決算の会社が多いので、近頃は株主総会の準備に追われている、という会社のご担当者様も多いのではないでしょうか。

今回は、株主総会において株主本人ではなく、代理人が来た場合の対応について触れてみたいと思います。

会社法上、株主は、代理人によって議決権を行使することが認められています(会社法310条1項)。

しかし、代理権さえあればいかなる人物でも株主総会に出席し議決権を行使することができるとすると、株主総会が撹乱され、会社にとって不利益な自体が生じることもありえます(総会屋が代表的な例です)。

そこで、実際には、多くの会社で、代理人を株主に限定するという内容の定款規定が設けられており、これについては、判例上も、合理的理由に基づく相当な程度の制限として、有効と判断されています(最判昭和43年11月1日民集22巻12号2402頁)。

これを前提とすると、株主以外の者を代理人として議決権行使をすることはできないように思えます。

しかし、これを厳格に適用すると、議決権行使という、株主としての重要な権利が事実上奪われてしまうことにもなりかねません。

そこで、上記定款規定の趣旨である、株主総会が撹乱されて会社の利益が害されるおそれがないといえる場合には、会社は、非株主である代理人の議決権行使を拒むことができないとされています。

職員や従業員を代理人として議決権行使をさせた場合

例えば、法人である株主が、職員や従業員を代理人として議決権行使をさせた事例では、これらの者は、組織の一員として上司の命令に服する義務を負い、議決権の代理行使に当たって株主の代表者の意図に反する行動はできないようになっている以上、株主総会を撹乱して会社の利益を害するおそれはないと判断されました(最判昭和51年12月24日民集30巻11号1076頁)。

また、古いものでは、いわゆる同族企業において、非株主である親族が、入院中の株主の代理人として議決権を行使することについて、定款規定の効果が及ばないと判断したものもあります(大阪高判昭和41年8月8日下民17巻7・8号647頁)。

非株主である弁護士が議決権を代理行使する場合

一方で、非株主である弁護士が議決権を代理行使することについては、判断が分かれています。

肯定した例(神戸地尼崎支判平成12年3月28日判タ2号288頁)では、弁護士が本人である株主の意図に反する行動をとることは通常考えられないことを理由として、代理人による議決権行使を認めましたが、
否定した例(宮崎地判平成14年4月25日金融商事1159号43号)では、非株主代理人による権利行使の可否について実質的基準を持ち込むことは弊害が多いことを理由に、代理人による議決権行使を拒否したことは違法ではないと判断しました。

確かに、当日の受付の場面で、個別の事案ごとに総会を撹乱するおそれがあるか否かを判断しなければならないというのは、会社にとっては負担が大きいため、この裁判例の結論も説得力があります。

ただ、いずれにしても、会社としては、事前に代理人による議決権行使について、どこまで認めるかどうか、統一した基準を定めておき、株主によって取扱いに差が生じることのないようにしておくことが重要です。

上記の内容を参考に、今一度、代理人による議決権行使の場合の対応を見直し、株主総会に臨まれてはいかがでしょうか。

⇒その他の会社法に関する内容についてはこちら

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