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下請法とは?|適用対象・禁止行為・資本金基準をわかりやすく解説

下請法が制定された背景

下請法(正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」)という法律をご存じでしょうか。この法律は、独占禁止法を補完するような形で制定された法律で、条文としてはわずか12の条文しかありません。

独占禁止法を適用する場合には、公正な市場競争を妨害するかなど抽象的な要件もあり、必ずしも適用されるかどうかが不明確でした。

他方で、元請事業者と下請事業者との間では、大きな力関係の違いがあり、下請事業者が不利な取引条件を押し付けられているという問題がありましたので、問題になることが多い一部の行為を明確化し、その行為自体を禁止するという下請法が制定されました。

下請法の目的

下請法の目的は、下請代金の支払遅延等を防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引を公正なものにさせるとともに、下請事業者の利益を保護し、国民経済の健全な発達に寄与することとされています(同法1条)。

下請法が適用されるか

下請法は昭和31年に制定されているかなり古くからある法律ですが、意外にその存在が知られていないのではないかと思われます。

下請法は、適用されるかどうかを明確にするために、元請・下請の契約のなかでも、一定の業務内容、企業規模、禁止行為を特定していますので、適用される、されないの判定に注意をする必要があるでしょう。

下請法が適用されるか ー業務内容ー

まず、下請法はあらゆる業務内容に適用されるわけではありません。下請法が適用される業務の内容は、「製造委託」、「修理委託」、「情報成果物作成委託」、「役務提供委託」の4種類に分けられています。4種類に分けられているといっても、それぞれがかなり幅広い分野にわたると思われますので、概ねの事業内容・産業内容で適用されると考えられます。

公益通報対応業務従事者(過去に公益通報対応業務従事者であった者を含む)は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならないとされていますが(12条)、公益通報者保護法で定められている罰則は、30万円以下の罰金(21条)又は20万円以下の過料(22条)の2つだけですので、実効性がどこまであるかは何とも言えないところです。

下請法が適用されるか ー企業規模ー

次に、下請法ではあらゆる親事業者(元請)・下請事業者に適用されるわけではありません。下請法では、事業規模の違いによる企業としての影響力等の違いに着目していることから、一定の企業規模の違いがなければ下請法は適用されないことになっています。

例えば、物品の製造・修理委託の場合には、親事業者が3億円を超える資本金をもっている場合、下請事業者として下請法の適用を受けるためには、下請事業者の資本金が3億円以下になっている必要があります。

また、親事業者の資本金が一千万円を超え3億円以下の場合には、下請事業者が個人又は資本金一千万円以下の会社であれば、下請法の適用を受けられます。

このような決まりがありますので、例えば親事業者(元請)の資本金が100億円あったとしても、下請事業者の資本金が5億円だった場合には下請法は適用されません。

また、下請事業者の資本金が1000万円だったとしても、親事業者(元請)の資本金が同じく1000万円の会社であった場合には、下請法は適用されません。

このような資本金による適用されるかどうかの問題がありますので、注意が必要でしょう。単純に元請・下請という関係性のみでは下請法が適用されるとは限りません。

下請法が適用されるか ー禁止行為ー

下請法で義務とされ、もしくは禁止・規制される行為は一定の行為に限られており、具体的には以下のような行為です。
※事業類型により、一部適用されないものもあります。

  • 親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日以内(できる限り短い期間内)での代金支払義務親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日以内(できる限り短い期間内)での代金支払義務
  • 書面等の交付義務(3条)
  • 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請事業者の給付の受領を拒むことの禁止(4条1項1号)
  • 下請代金の支払遅延の禁止(同2号)
  • 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請代金の減額禁止(同3号)
  • 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請事業者の給付を受領した後で下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることの禁止(返品の禁止)(同4号)
  • 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い下請代金の額を不当に定めることの禁止(買いたたきの禁止)(同5号)
  • 親事業者の指定する物を強制購入させ、又は役務を強制利用させることの禁止(同6条)
    ※下請事業者の給付の内容を均質にしたり改善を図るなど正当な理由がある場合を除く。
  • 下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対し通報等をしたことを理由に取引を減らしたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすることの禁止(報復行為の禁止)(同7号)
  • 親事業者に対する給付に必要な原材料等を親事業者から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、その原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、下請代金と相殺したり、全部又は一部を早期に支払わせることの禁止(有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止)(同2項1号)
  • 下請代金の支払を、支払期日までに一般の金融機関での割引が困難な手形で支払うことの禁止(同2号)
  • 親事業者のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることの禁止(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)(同3号)
  • 下請事業者に責任のない、給付内容の変更、給付受領後(役務提供後)のやり直しの禁止(同4号)
  • 60日を経過して支払いが遅れた場合の遅延利息(公正取引委員会規則で定める率)の支払義務(4条の2)


といったものが定められています。

一定の行為に限ることで、適用されるかどうかはっきりしない状況を避ける趣旨だと思われます。

さいごに

下請法が適用されるくらいの企業規模の差があれば、下請法によって救済される可能性もありますので、一度確認をしてみることがいいでしょう。

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