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印鑑廃止の影響

弁護士 杉浦 恵一

近時のニュースで、河野行政改革担当大臣から、行政手続における印鑑・押印の廃止を目指すといった話が出ています。

河野大臣のウェブログを見ますと、民間から行政に対して行う申請等の手続きのうちで、押印を求めているものが1万1049種類あると記載されております。

印鑑廃止の対象

行政改革の一環として、印鑑の廃止を目指すようですが、ブログの内容を見ますと、印鑑証明が必要なもの銀行印が必要なもの契約書などを除いて、原則として廃止することを求めているということです。

つまり、今のところは、印鑑証明が必要なものは、本人確認という目的があるため簡単には廃止できず、銀行印が必要なものは、銀行振り込み先が正しいかどうか、預金名義人の意思確認のために廃止できず、契約書については、契約当事者の意思表示の確認のために簡単には廃止できない、といったところだと思われます。

廃止を目指すのは、あくまで「民間から行政に対して行う申請等」が押印を廃止する対象だとみられているようです。

印鑑

印鑑の意味と必要性

確かに、民間から行政に対する申請は、押印の必要性があるのかは疑問が残ります。

印鑑の意味としては、本人であることの確認と、本人の意思がきちんと表示されていることの確認という点が、まずは考えられます。

「民間から行政に対して行う申請等」のうち、申請者にとって利益のある申請で、第三者にとって特に不利益になるわけではないものであれば、印鑑があるか否かによって特に変わりがないように思われます。

申請者にとって利益のある申請であれば、本人を偽る必要性がないため、本人確認を厳格にする必要性がありません。

また、本人の意思は、申請書類の提出によって明らかだと思われますので、本人の意思がきちんと表示されているかの確認も、厳格にする必要性がないと考えられます。

印鑑廃止が難しい例

これに対して、申請者と第三者の利益が相反する可能性のある申請では、本人確認や、本人の意思が表示されているかを厳格に確認する必要があります。

一例を挙げますと、不動産の名義変更の登記申請が考えられます。

不動産の名義を変更するということは、ある人が所有者でなくなり、ある人に所有権が移転しているという表示をすることになります。

一般的に、誰が不動産の所有者なのかは、登記がどのようになされているかによって確認しますので、不動産の登記名義がどのようになっているかは、個人の財産権・所有権の点で、非常に重要であるといえます。

登記名義を変更する場合、通常は、申請書などに実印を押印した上、印鑑登録証明書を添付し、本人確認と本人の意思が表示されている確認をすることになります。

このような手続きでは、本人確認等の必要性から、印鑑を廃止することは、すぐには難しいでしょう。

例えば、マイナンバーカードとパスワードを組み合わせたセキュリティや、マイナンバーカードと生体認証を組み合わせたセキュリティなど、登録された印鑑自体の所持とその印鑑登録証明書という組み合わせに代替するような方法がなければ、本人確認等を厳格にする必要がある手続きから、印鑑を廃止することは難しいでしょう。

マイナンバーカード

契約書の場合

契約書についても、権利だけでなく義務も記載されていることから、不利益を受ける可能性があれば、原則として本人の意思表示を厳格に確認する方法が必要でしょう。

近年、電子契約ということで、印鑑を使わずに契約を締結する例もあります。

そのため、契約でも印鑑を廃止できると思われますが、どのように意思確認の仕組みを整えるかという問題はあります。

終わりに

行政改革の一環として印鑑の押印が廃止される方向にありますが、全ての手続きで印鑑が廃止されるわけではないようですし、現実にも難しい部分がありますので、この点は注意が必要でしょう。

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